献体三十年
徳島大学白菊会 徳島大学白菊会は、昭和42年9月に結成されました。東京オリンピックが終わって高度経済成長が軌道に乗り、世界に類例のない高水準の経済発展に支えられて、物質生活は眼に見えて豊かになり、大量消費時代へと移り変わった頃です。
しかしこと献体に関しては、世間一般の理解も地域社会の認識も乏しく、白菊会設立の趣旨も容易には浸透せず、会員募集にも数々の困難があったと承っております。設立当初の会員は43名で、初代理事長は大久保九平氏でした。まさに先人のご苦労が偲ばれますけれども、現在でも寺澤猪三郎副理事長をはじめ五名の当初会員がご健在で、本会の重鎮となっております。
当初は医学部の解剖学教育支援が唯一の目的でありましたが、昭和51年10月に歯学部が設立され、ここで両学部の解剖学教育を支援する体制になりました。広報活動の進展とともに、県民各位や自治体の理解も徐々に深まってゆき、入会者も年を追って漸増するようになりました。現在では、登録会員は1,300名に達しております。
大学当局のご努力、ご協力も手伝い、会の運営は極めて円滑に行われております。例えば、近年都会地大学に顕著に見られる会員の過剰傾向は、まだ当会では問題点となっておらず、財政も健全運営が貫かれております。
会の活動にも創意工夫が凝らされて充実し、定着して参りました。毎年総会を開いて全会員の親睦を図っているほか、機関誌「白菊」を充実させて情報の伝達に努めております。とくに本年の「白菊」第29号では、医学部歯学部両教官から解剖学教育と解剖設備、教育カリキュラムについて詳細な手記が寄せられ、信頼感の確立に役立っております。
また、毎年秋の解剖体慰霊祭の時には、会員と医学部、歯学部の実習学生諸君との懇談会が開かれておりますが、学生諸君の意見は優れて真面目、率直であり、お互いの理解を深めるとともに、献体が人格的に優れた医師の育成に不可欠であることを、痛感できる場となっております。「白菊」に寄せられる学生諸君の手記も、いずれもが真剣、かつ率直に実習の意義と、医師として立つ決意を語っており、会員のまたとない心の糧となっております。
こうして当会は、来年(平成9年)に設立30周年を迎える運びとなりました。二代目理事長粟田正文氏、三代目理事長美馬準一氏のあとを受けて、本年小生が四代目理事長に就任いたしました。
先人の残された美風、伝統を受け継ぎつつ、全会員の心を指針として、時代要請にも合った日々新たな白菊会運営を心掛けたい、と念じております。
(理事長 吉成専資)
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